私が研究を始めた1960年代後半から1970年代は,ちょうどコンピュータが身近に使えるようになった普及期にありました。
大阪大学の助手として仕事をするようになってから,応用に即したモデリングが主要な研究テーマになりました。ここでいうモデリングとは,コンピュータの内部に幾何学的形状を作ったり,産業用ロボットのリンク機構を表現したり,工作機械の熱変形模型を作って加工のシミュレーションを行ったり,と仮想的な状況を作るためのモデリングです。モデルというのは模型のことで,実体そのものではないのですが,実体の特徴的な属性の表現になっています。そして,コンピュータにおけるモデリングでは,そこに計算を施すことで表面的には見えていない性質を調べることができます。
模型とは言っても,幾何学的なモデルばかりではありません。データベースに実体間の関係が記述されていれば,これをデータモデルと言います。このように考えると情報システムには,はっきりモデルとは言わないにしても何らかの実体と対応のつくモデルが埋め込まれており,ITはそのモデルを人の活動に利用する技術ということになります。
情報の持つ意味やITのもたらす効果は,社会の変化と共に変わり,人それぞれの物事に対する認識の仕方によっても変わってきます。いろいろなものの考え方を持ち寄って,そこから新しい見方を創り出す,これが大学という場です。若くてフレッシュな頭脳による認識もあれば,いろいろな経験を積んで来た人の認識もあってよいのだと思います。皆さんにも,この創造の場に参加していただけることを願っております。
- 生産システムにおけるモデリング
- 制約に基づく問題解決
コンピュータにおけるモデリングは,ものづくりのための幾何モデル,熱変形解析のための有限要素からなるモデル,工場における部品の流れを表す同期モデル,ロボットなどの機構を表現する拘束条件モデル,コントローラで扱われる事象の同期モデルなど,対象となるものの注目する特徴に視点をおいて,データ間の依存関係を表している。そして,このモデルを使って,我々はそこから,人にとって有用な問題解決を図ろうとする。特にいま重要なのは計画型の問題解決である。数理計画法は有用なツールを提供するが,いま現実に問題になっているのは,多様な事象や組織が連携した状態でのグローバルな解を求めることであろう。ここでは,最適解を求めることの前に,制約条件を満たす解を求めることが先決であるように思われる。このような観点から,制約に基づくモデリングにシステムダイナミクスや数理計画法を適用していく手法を検討している。