私ははじめにコンピュータの基礎的概念を学んだ後,生産システムでのコンピュータ応用に関わるようになり,応用面から情 報のもつ意義を考えるようになりました。本来情報は,発信する 人がいて,通信と処理を経て別の人に伝えられます。このとき,人が本来コンピュータ利用以前に持っていた原理・知識・技術の蓄積があってこれがコンピュータによって大きな効果をもたらしています。
情報ネットワークを流れているデータは,単なるパルスの並ひですが,ここから数値データを読み取り複雑な計算が実行できるのは,もともと人間がもっていた位取り記数法の原理によっています。マルチメディア処理で音楽や画像の情報圧縮に使わ れている離散コサイン変換あるいは離散フーリエ変換は,フーリエが熱伝導方程式の解法として考えだしたフーリエ解析から派生してきた解法です。CAD/CAM/CAEの言葉に表されるように,生産システムは広い意味でのITの応用がなくては成り立 ちません。その大部分は,力学の行列計算です。もともと人は自然界の法則を数学や力学を使って抽出して,これらを巧みに使って生活に役立たせてきたのです。それが広い意味でのITの中に取り込まれ,大きな効果を発揮しています。
そしていま,生産システムは一企業の中の閉じたシステムでは なくなりました。世界中のどこに需要があって,その求めるものが 何であるかを判断し,どこで材料を調達し生産するかを定め,蓄 積された技術を使って顧客満足を満たすことが求められてい ます。これを実現するのもITです。そして,そこにはプログラミン グの技術に加えて,人の持っている多角的な視点と知恵が必 要なのです。皆さんにもぜひ本学において新しいものの見方考 え方を身に付けて社会に貢献されるように期待しています。
- 生産システムにおけるモデリング
- 制約に基づく問題解決
コンピュータにおけるモデリングは,ものづくりのための幾何モデル,熱変形解析のための有限要素からなるモデル,工場における部品の流れを表す同期モデル,ロボットなどの機構を表現する拘束条件モデル,コントローラで扱われる事象の同期モデルなど,対象となるものの注目する特徴に視点をおいて,データ間の依存関係を表している。そして,このモデルを使って,我々はそこから,人にとって有用な問題解決を図ろうとする。特にいま重要なのは計画型の問題解決である。数理計画法は有用なツールを提供するが,いま現実に問題になっているのは,多様な事象や組織が連携した状態でのグローバルな解を求めることであろう。ここでは,最適解を求めることの前に,制約条件を満たす解を求めることが先決であるように思われる。このような観点から,制約に基づくモデリングにシステムダイナミクスや数理計画法を適用していく手法を検討している。