36年前(1970年頃),大学を卒業したばかりの私は,急速に浸透し始めた汎用大型コンピュータ(当時の電子計算機)に将来の夢を託して大阪大学大学院通信工学専攻に入学しました。修士課程ではビジネス分野へ普及し始めた商用データベースシステムを対象に,データ構造やシステムの新機能について調査研究を行い,引き続き博士課程で米国のスタンフォード大やMITで生まれ,わが国に流入してきた人工知能(Artificial Intelligence)技術の一分野,定理自動証明システムの試作開発に取り組みました。
1976年,富士通株式会社入社と同時に同社の研究所情報処理研究部門ソフトウェア・グループに配属された当時,IBMサンノゼ研究所で研究開発中で数年後の製品化が噂されていた「リレーショナル・データベース(Relational Database)」の管理システム(RDBMS)の実用化研究を行い,着手から2年半後に国産初のRDBMS第一版(RDB/V1)を試作し,同システムを京都大学大型計算機センターや国土庁に納入した思い出があります。この時は1981年秋に,先行するIBM社より半年早い商用化を達成しました。現在,RDBデファクトスタンダードのOracle社も当時は後発で,ミニコンベースの小ベンダーでしたが,二十数年を経てみると,日本のコンピュータ・メーカーと米国ソフト・ベンダーのアントレプレナー・スピリット(起業家精神)の差を見せつけられた感があります。学生も含め,わが国の若年層技術者に対し,ビジネスに結びつけるだけのシステム開発力(主に設計能力)の養成が重要課題と痛感しています。
20年以上の企業研究所におけるデータベースシステム,オブジェクト指向システム,知識ベース管理,マルチメディア検索,プログラム動作の可視化などの研究開発の経験をもとに,本学において,ウェブ・ビジネスニーズに応える新しいシステムを構想し設計する力,一緒に仕事をするチームと自分の力をマッチさせスピーディーにものづくりをするマネジメント力を養成するお手伝いをしたいと考えています。過去の金沢工業大学の教員生活と富士通ユニバーシティの社員教育で得た経験も役立つと思います。
データベースシステムの理論的根拠を与えるリレーショナル代数や正規化理論,データベースシステムの最適化手法や効率的な構成論,および分散データベース化,オブジェクト指向アプローチによる知識ベース化・マルチメディア化についても強い関心をもつ。実際に,企業研究所においてリレーショナルデータベース管理システムの国産第一号を開発し実用化を図るとともに種々の社会システムへの適用を通して,新しい性能改善策を生み出す経験を積んだ。また,リレーショナルデータベースシステムへの適用範囲の拡大に挑戦してきた。たとえば,通信ネットワーク技術を利用するデータベースの均質分散(水平分散化)技術,数値・文字メディアから画像,音声,映像なども含むマルチメディアデータベース技術,それらの1つの応用としての次世代電子図書館システムの開発,さらにインターネット・ビジネスモデル(eコマース/ウェブショッピングなど)へのデータベースの応用分野の課題と取り組む。さらに,21世紀のグローバル企業において,ITシステムの中核部分を構成するSCM,CRM,ERPシステムなどを支えるデータウェアハウス(DataWareHouse)とデータマイニング技術を活かした新しいビジネスインテリジェンス分野のシステム開発に挑戦している。