
現在,わが国の一般大学から輩出される人間と業界が求める人材との間に甚だしい乖離があるが,これは一つには大学で学問を実践指向の観点から教えていなかったことに起因すると考えられる。
全国700校ほどの大学の中,アカデミズム(研究指向)大学は約1割で十分であり,その他の大学(大衆大学)はプラグマティズム(実践指向)大学であってしかるべきであった。実践指向大学は,実践主義,実用主義の立場においてカリキュラムを組み,実用のための理論を教授し,実践のための技術を習得させ,業界で役立つ人材の育成を目的とする。しかるに,日本では,どの大学もアカデミズムを標榜し,実践指向大学はほとんど育たなかった。一つには,「学問の自由・独立」という思想の濫用がベースにあったのかもしれない。
今般,プロフェッショナル大学院設立にあたり,この大学院を大学と業界の「はざま」に位置づける。そのため,教育哲学としては,「真理探究」を目的とするアカデミズムでなく,「実用と実践のための学問」を価値とするプラグマティズムに立脚したい。アメリカの土壌となっているプラグマティズム思想は机上の思弁の中から生まれたのではなく,建国時の開拓精神,生活闘争,民主主義思想にルーツを持ち,むしろそれらの集大成であるといえる。「はじめに行動ありき」である。プラグマティズムはアカデミズムと対立し,真理のための真理探究を否定し,知識はすべて現実生活のための手段,道具であり,行動を通して実際的な効果を実生活の中に実らせるものでなければならないと主張する。アメリカにおけるコンピュータリテラシー,ITリテラシーの急速な普及,さらにIT関連の開発技術で世界で群を抜く秀逸性も,プラグマティズム土壌があってこそだと分析される。応用情報技術を専門とする我々は,この点を重視し,この思想の下,現在のWebコンピューティング時代からユビキタスコンピューティング時代に向かって,時代・社会が求める,より高度な実践技術力を持ったプロフェッショナルズの育成を目指す。