
̶̶̶eビジネスの世界は急速に変動しているようです。インターネッ普及に伴い,ビジネスのあり方も変わってきましたか。
私が三星電子の情報戦略部長になって間もない1990年代半ば,海外向けも含めたウェブサイトを立ち上げました。当時はまだ,インターネットがマーケティングの強力なツールになるとは考えておらず,単に,企業の知名度向上のための手段という認識に過ぎませんでした。しかし,サイトを公開した途端,世界中のあらゆるところから製品のアフターケアに関する問い合わせや苦情などのメールが1日200通ほど届いたのです。このとき,ウェブサイトをマーケティングに活用できるのではないかとの感触を得ました。
その後,ウェブ上の約システムや証券取引など,インターネットを利用したビジネスは増えました。しかし,ただインターネット上で使えるシステムを開発してビジネスを展開すれば売り上げが大幅に伸びる,というわけではありません。当時,韓国でもインターネットさえ使いこなせばビジネスがうまくいくという,間違ったITブームが起きました。インターネットショッピングモールを作って商品を並べれば,世界中から顧客が集まってきて商売が成立する,と思い込んでしまったのです。実際,ほとんどのショッピングモールが,数年でインターネット上から消えてしまいましたよね。
結局は,インターネットが一つのツールでしかないということに気付かなかったのでしょう。また,「戦略」が不足していたともいえます。インターネット上に商品がいくら並んでいたとしても,所詮,画面上に示されているだけに過ぎません。実際に商品を買うときは,オフラインで手に取って確かめてから,というケースがほとんどでしたからね。
日本や韓国などでは,残念ながら,IT(ICT)を活かして会社の売り上げを向上させる戦略を立てられる人材が少ないのが現状です。一方で,企業はITインフラの整備に莫大な投資をしていますから,企業側の悩みは尽きないわけです
企業が求めているのは,一言でいうと「eビジネス戦略を立案できる人材」ですね。つまりIT資源をマーケティング・経営に活かしていける力を持たなければならないということです。
もともと日本や韓国の企業における従業員は,マーケティングの意識が薄いと思われます。日々仕事をすれば給与がもらえるといった,儲けの均等配分という考えが根底にあるからです。
一方,アメリカでは違います。働いている量というか,実際にした仕事がどれだけ会社に貢献しているか,ということが常に厳しく問われます。アメリカの企業にはマーケティングを専門とする部署がほとんどありません。従業員すべてがその認識を持っているので,必要ないというわけです。アメリカの企業は,たとえ景気が悪くなっても,どうやったら売り上げを伸ばしていけるか考えることが身についていますから,常に前進する可能性があります。日本や韓国の企業が太刀打ちするのが難しいわけです。日本や韓国では,マーケティングとは単に「営業」,「広告」,「ブランド」であると勘違いしている企業が大手を含め多々あります。ですから,インターネットをビジネスに活かし,IT企業として成功したのは現在のところアメリカのみです。日本や韓国にも国内ではそのような評価を受けている企業はありますが,実際のところは,インフラとしての整備が進んだために起きたeビジネスのブームに乗り,マネーゲームによって成長した,というのが本当です。ちなみにヨーロッパにもeビジネスで成功した企業はありません。これは,インターネットの普及が大幅に遅れているからです。
̶̶̶このような中,本学はどのような特長を打ち出し,何を目指していくのでしょうか。
ITを専門にした大学院は多くありません。しかも本学には,KCG (京都コンピュータ学院)という歴史に裏打ちされたバックグラウンドが あります。これは最大のメリットです。
また,本学には専門知識と技術を持ち,かつ企業での実務経験の豊かな教員が揃っています。私自身も講義では,なるべく自らが直接手掛けたことについて,うまくいったことだけでなく,失敗例も織り交ぜながら話すようにしています。失敗例のほうがより多くのことを学べることも多々あるからです。このようにして,時代が真に求めている人材を育成しています。
海外の大学との教育ネットワークも年々広がっています。フィールドは日本に限りません。アジアを,世界を舞台に活躍できる人材育成に貢献していく専門職大学院でありたいと思っています。