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2007年4月 新入生に贈る ―期待されるIT専門職―

IT先進国の米国では,IT革命が新しいステージに入ったと云われている。ネット活用による情報検索あるいはeビジネスだけでなく,個人の情報検索傾向を分析してのより有効な情報提供,それを活用してのアフィリエイト広告ビジネスモデル,個人が情報・知識を発信する情報民主主義が台頭してきている。所謂,Web2.0と呼ばれるステージに入っている。日本国内においてもIT関連企業はこの米国のWeb2.0を追いかけようとしているようだが,それだけに猛進することには大いに疑問がある。

内閣府がOECDのデータを元に分析した2005年度時点の各国の労働生産性比較では,日本の労働生産性は米国の7割,EU諸国の8割程度で,OECD平均より低い結果となっている。日本の製造業の生産性はトヨタ,キヤノンが各々の業種で世界一の収益をあげており,労働生産性が高いことを考えると,流通・サービス業の労働生産性が特に低い状態にある。この労働生産性は就業者数,国内総生産(GDP)を主要値として計算されているが,何故,日本の労働生産性がこのように低く,また,向上されないのであろうか。

考えられる理由は人件費の高さ,高品質な製品づくりの国民性が影響しているが,労働生産性の向上が他国と比べ低いことから,IT活用による労働生産性向上が実現していないと云えるだろう。実際,公共サービス,私企業のIT化の現状を観察してみると,個別業務のIT化は進んできたが,各企業の全体的なIT化,政府・地方自治体連携のIT化が他国と比べ遅れている。

もう一点,心配な点がある。日本の製造業の労働生産性はまだ高いが,東南アジア各国の産業・技術向上により工場はますます日本からなくなる方向にある。すなわち,米国同様にサービス業の比重が高くなる傾向にあるにも関わらず,日本のサービス業の労働生産性が非常に低いのである。

今後の日本経済がより発展するには,製造業は今まで以上にITを活用し労働生産性を向上させる必要があるとともに,サービス業は徹底したITの活用により合理化を目指す必要がある。また,公共サービスにおいては,規制緩和・民営化を徹底して行うとともに,国民へのサービス向上を最優先する市場原理にのっとったIT活用によるサービスの再構築を目指すべきである。

従い,今後のIT専門職にはWeb2.0に乗り遅れないよう新技術を習得することだけでなく,Web2.0を支える基幹業務系システムの統合化・企業間連携の標準化技術が求められる。

上田 治文