
従来の大学・大学院によるIT教育では,多くの場合「どのようにビジネスに活用するべきか」という視点が欠けていました。特に業務統合,部門統合といった企業活動そのものに関わる本格的なIT活用教育を進めるための環境は,いまだ整っていない状況です。
本学では,IT分野の高度な実務家育成のため,世界最大手のERP(企業資源計画)パッケージベンダーであるドイツSAP社のR/3を教育用に導入し,実践的な学習・研究環境を実現しています。このERPシステムは,世界の主要企業2万社以上が導入し,日本国内でも50%以上のシェアを誇っています。このシステムが,教育・実習用として本格的に教育機関に導入された例は他に類似のものがなく,日本最初のIT専門職大学院である京都情報大学院大学の特色の一つといえます。
R/3は,約1万種類のパラメータの集合から成る,巨大で複雑なシステムです。それをどのように設定し,動かすかを修得することは,独学では非常に困難です。導入企業の多くは,そうした専門家が社内にいないため,外部の専門企業に頼っています。
ERPのベンダーは,独自にユーザ向けの教育プログラムを有している場合もありますが,そうしたプログラムは,製品の理解を主眼にしたものであり,その製品の有効活用に関するノウハウにまでは触れていません。
これに対し本学では,単にR/3システムの操作方法のみを学ぶのではなく,企業における業務処理の流れを学びながら,どのようにシステムを有効活用するかに力点を置き,企業経営に関するコンサルティングができる高度で実践的なスキルの修得を目的とします。その意味で,コンサルティングファームに近い教育といえます。
R/3システムは,本来のERP機能に加えてCRM(顧客管理手法),SCM(サプライチェーン管理),DWH(データウェアハウス)の機能も備えています。
SAPシステムには,適用される業種や目的に応じてパラメータが設定され,カスタマイズされる「テンプレート」と呼ばれるシナリオがあります。また,SAP社のR/3はIDES*という教育システムを備えています。本学ウェブビジネス技術専攻の必修科目であるキャリア強化科目を通して,学生は,マネジメントに関する知識を学習します。同時に,IDESの代表的なシナリオのいくつかを実際に経験しながら,SAPシステムがどのように動き,どのような業務をサポートできるのか,種々検討し,例えばCRMによる販売促進,SCMによる在庫削減など,ERPの導入により業務全体がどう変わるのかを,実践的に学びます。また,本学ではSAP認定コンサルタント対策講義も実施しています。
*IDES: International Development and Education System