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今井 正治 教授

今井 正治 教授

今井 正治 教授

KCGIサステイナブル・オープンイノベーション・センター(SOIC)長
名古屋大学工学士
同大学院博士後期課程修了(情報工学専攻)工学博士
元豊橋技術科学大学教授 元米国サウスカロライナ大学客員助教授
大阪大学名誉教授
元(株)テクサー 取締役CTO 
エイシップ・ソリューションズ(株)代表取締役。

今井正治教授は,IoTを使いこなしながら人工知能(機械学習)応用システムの構築ができるエンジニアの育成に向け,産業界の最新動向を見極めた教育を展開しています。近年では講義「IoTと人工知能」を担当し,エッジコンピューティングでの機械学習の展開などについても指導。本学と産業界,行政機関,金融機関,教育研究機関,NPOなど,学外の団体等との連携活動促進を目的とし,SDGsに基づく研究・開発・実証実験を推進する「サステイナブル・オープンイノベーション・センター」のセンター長を務めます。

多様性と包含性を実現できる組織を構築し運営できるリーダーに

AIは確かに職業を奪う,だが一方で,より高度で新しい仕事を生み出す

-「第4次産業革命」ではAIがどのような役割を果たしていくのでしょうか?

「第4次産業革命」では,様々な「モノ」が「インターネット」に接続され,それを人工知能(AI)が制御することによって産業構造の変革をもたらすと言われています。これに伴って人間の役割や仕事の仕方が大きく変わり,ロボットを賢く動かすためにはIoT(Internet of Things:モノのインターネット)とAIの技術が必須となりました。

第4次産業革命の最大のインパクトは,これまでインターネットで集められた情報をコンピュータで解析した結果を人間が見て判断していたシステムが,コンピュータによって人間を介することなく「知的な判断」ができるようになるという点です。しかも,コンピュータは人間に教えられなくても,AIの一種である機械学習(Machine Learning)の技術の発達によって,判断の方法を機械(コンピュータ)が自ら学習できるようになったのです。

これによりAIが人間のあらゆる仕事を奪ってしまうのではないかとの危機感が聞かれますが,私はそのように考えていません。第4次産業革命によって人間が行う必要がなくなる職種が存在するのは確かですが,同時に,AIを使いこなすことでより高度な仕事や新しい仕事を生み出すことができるからです。

SDGsへの理解,すなわち新たな価値観や倫理観の共有が必要

‐教育・講義ではどのような点を重要視されていますか?

教育では,原理を深く理解し現実課題に応用できる力や,自らの考えを他分野の方に分かりやすく説明できる力,そして社会的課題としてSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への理解を重要視しています。人間の生活を大きく変える技術を前にした今,従来の道徳感では事足りず,自分たちがどのように発展していきたいのかという新たな価値観や倫理観の共有が必要です。

マスタープロジェクトを履修する学生を対象に,若手教員数名とともに「Open innovation zeminar(Oz)」というゼミをつくり,研究活動を支援しています。このゼミでは自分の研究を他領域の方に説明する力を必要とします。技術だけでなく,多様性・包含性を実現できる力を育みながら自らの目標をやり遂げられるように,学生を支援しています。

人工知能が出した「答」の真偽を見分けられる感性を身につけて!

‐KCGIの学生には,どのような目標を持って学びに取り組んでもらいたいですか?

最近の人工知能技術の中で最も注目を集めているのは,ChatGPTのような生成AIです。生成AIは,人間にとって優秀な秘書のような存在なので,これをうまく使いこなせると,知的作業の生産性が大きく向上します。しかし,生成AIが出してくる「答」は常に正しいとは限らないという問題があります。たとえば,使われ始めたころのChatGPTに「今井正治はどんな人ですか?」と尋ねたことがあります。するとChatGPTは,「日本の音楽家であり,作曲家,編曲家,キーボーディスト,音楽プロデューサーです。」と自信たっぷりに答えました。主にアニメーションやゲームの世界で活躍しているのだそうです。しかし,これは事実に反しています。生成AIの出してくる「答」をそのまま信じていると,生成AIに奴隷として使われることになりかねません。

KCGIでは,科学(Science),技術(Technology),工学(Engineering),数学(Mathematics)に芸術・リベラルアーツ(Arts)を加えたSTEAM教育の考え方を重視しています。このような教育体制で学ぶことによって,人工知能が出した「答」を妄信するのではなく,その「答」の真偽を見分けられる教養と感性(直感)を身につけてほしいと思います。21世紀の人類の目標は,現在我々が直面している様々な社会的課題(地球温暖化,貧困,不平等など)を解決し,人間が幸せに生活できる持続性のある社会を実現することだと私は思います。そのために,IoTとAIが大きな威力を発揮することになるでしょう。私たちは,今まさにこのような技術や社会の大きな転換点で生きています。学生の皆さんが将来,本学で勉強した知識や技術や考え方を活かして,それぞれの立場で社会に貢献していただけることを期待しています。