概要
ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)とは,企業が持つ様々な経営資源を統一的に管理し,最大限に活用するための統合管理システムです。このシステムを導入することで,販売,購買,在庫管理,会計,人事管理,製造プロセスなど,企業の核となる業務を一つのプラットフォーム上で一元管理することが可能になります。ERPは,各部門が生成する情報をリアルタイムで共有し,企業全体の効率化を図ります。これにより,業務プロセスの最適化,情報の透明性の向上,そして迅速な意思決定を実現し,競争力のあるビジネス運営をサポートします。
SAP社のS/4HANAを用いたERP教育プログラムでは,ビジネスプロセスの効率化とデータ活用を中心に学びます。このシステムの実践的な操作方法,財務,物流,人事など各業務領域での応用を通じ,企業運営の最適化とデジタル変革の推進方法を修得します。また,リアルタイムでの情報処理能力を活かした意思決定支援の技術も学びます。このプログラムは,未来のビジネスリーダーや専門家を目指す学生にとって,貴重な学習機会となります。
目指す人材像
- ERP導入コンサルタント
- ERPカスタマイズエンジニア
- ERPアドオン開発エンジニア
過去のマスタープロジェクトのテーマ
- eビジネスのライブコマースにおける消費者の購入意向の影響要因に関する研究
- 製造業向けのSAP導入の背景と成功要因に関する考察
- 中小企業におけるERP実施及び応用への研究
マスタープロジェクト担当教員の声
藤原 正樹教授
S/4HANAを使用したERP教育を受講した後,マスタープロジェクトでは,様々な研究分野に取り組みます。例えば,ビジネスプロセスの最適化,サプライチェーン管理の効率化,人工知能(AI)やビッグデータを活用した意思決定プロセスの改善など,実務に直結したテーマに取り組むことができます。また,ERPシステムの導入効果の分析,ERPを用いた新たなビジネスモデルの開発,企業のデジタル変革を支援する戦略立案など,理論と実践を組み合わせた研究が期待されます。これらの研究は,企業の経営効率向上に直接貢献するだけでなく,将来のビジネスリーダーやコンサルタントとしてのキャリアにも大きく影響します。ERP教育を受けた学生は,テクノロジーとビジネスの両面から社会に貢献する研究を展開することができます。
李 鷁教授
企業間競争が激化する時代に,多くの企業は業務改善のためにERPパッケージを導入しています。本学で学生たちは経営・会計の知識とプログラミングなどの基本的なITについて学修したうえで,ERPの 購買在庫・生産・販売物流・会計と人事管理システムのカスタマイズを学びます。さらにプロジェクトで業種別のERP導入を研究し,業務プロセスの改善を目指し,経営課題の解決策を提案します。グローバル化の進展に従い,国際的に活躍するERPコンサルタントのニーズが高まっています。本学は時代のニーズに応じ,グローバルなERPコンサルタントを育成し,英語と日本語両方のERPコンサルタント教育を行います。プロジェクトでIFRS(国際会計基準)を適用したERPシステムへ の対応研究も進めています。
SAP認定コンサルタント試験に多数合格
ドイツSAP社のERP(企業資源計画)パッケージソフトウェアは,多数の世界的な企業で利用されており,SAP認定コンサルタント試験は難関として知られています。この試験に合格して認定資格を取得することは,ERP関連のコンサルタントや企業におけるIT部門のスタッフとしての活躍を目指す人にとっては,大きな力となります。
本学ではSAP認定コンサルタント試験にこれまで留学生も含めて280名以上が合格したという実績があります。
福山さん
(株)日比谷コンピュータシステム
2017年3月修了
佛教大学 社会学部卒
京都コンピュータ学院 情報処理科卒
大学時代は社会学部で社会調査の勉強をしていましたが,収集したデータの統計処理でコンピュータを使おうとした際,この分野の知識が不十分であることに気づきました。大学院ではITを学ぼうと考えてKCGIに進学し,授業の中でERPと出会ったのです。このような企業経営を支えるシステムがあることに驚き,強い関心を持ちました。
特に財務会計システムは会社経営を支える根幹であり,この分野でERPコンサルタントの資格を取得すれば,就職に有利になると考えました。KCGIではERP関連の授業が充実しており,担当の先生方が資格取得に向けて力を注いでくださることも手伝って,受験を決めました。
試験勉強はあまり手を広げず,授業や集中講義の中で教えられた内容だけに集中して勉強しました。特に過去の試験問題の詳細な解説が役に立ったと思います。在学中に合格できたことで,自分への自信になり,マスタープロジェクトにもしっかり取り組むことができました。就職への道も開け,東京のERPコンサルタントに特化した会社から内定をいただきました。ERPは新しい技術が次々と出てくる分野なので,柔軟に新しい知識を吸収して,第一線で活躍し続けたいです。
ERPコンサルタントを目指す取り組み
ERP専門分野の主な履修科目で,次のような講義や実習を順に履修することにより,SAP認定コンサルタントの資格試験のための準備と,企業でのERPプロジェクト導入のノウハウ修得を,在学中に進めることができます。これらの授業は,ERP以外の専門分野を選択している場合でも履修することができます。
【第1セメスタ】
経営情報システムの基礎の学修
- 企業システム
- 企業活動の目的と,それを達成するための基幹業務の役割について学びます。各基幹業務について,どのような情報が発生し,どのように情報システム化されているかを理解し,その情報システムの開発方法を学びます。
- 業務の統合化とeビジネス
- 企業の構造とビジネスの仕組みを理解し,最新のICTを駆使することで競争優位を獲得する業務統合のあり方をSAP社のERPを通して学びます。
【第2セメスタ~第3セメスタ】
SAP認定コンサルタント試験に対応する講義
- 財務会計システム開発I/II
- ERPシステムに使われる財務会計システムの開発を行います。SAP社のERPシステムのFinancial Accounting( FI)モジュールを利用し,財務会計システムの基本設計,伝票処理,決算処理,財務会計レポートなどを扱います。
目標とする資格
SAP Certified Application Associate ‒ Financial Accounting
- 販売物流システム開発
- ERPシステムに使われる販売物流システムの開発を行います。SAP社のERPシステムのSales and Distribution (SD)モジュールを利用し,販売物流システムの基本設定,受注から入金までの処理を扱います。
目標とする資格
SAP Certified Application Associate ‒ Sales and Distribution
- 生産管理システム開発
- ERPシステムに使われる生産・プロセス生産システムの開発を行います。SAP社のERPシステムのProduction Planning(PP)モジュールを利用し,生産システムのマスタデータ,資材所要量計画と製造指図などを扱います。
目標とする資格
SAP Certified Application Associate ‒ Production Planning and Manufacturing
【第3セメスタ以降】
ERPシステムの導入・開発に向けた実践的な学修
- ERP導入擬似プロジェクト
- 特定の業界・企業に則したビジネスモデルやビジネスプロセスを擬似的に策定した上で,そこにSAP社のERPシステムの各種モジュールを導入する際の仕様書作成や導入テスト,レポート作成などを演習します。
- インターンシップ
- 春期・夏期の長期休暇に約1カ月間,海外を含むSAP社のERP導入企業でのインターンシップに参加します(希望者のみ)。企業でのERPプロジェクトの実習(マニュアル作成,ユーザ教育など)や開発作業に携わります。
- Add-on開発プログラミング
- SAP社のERPシステムの各種モジュールに機能追加(add-on)を行うための専用言語である「ABAP」(Advanced Business Application Programming)を用いて,追加プログラムの開発を行います。
KCGIからのSAP認定試験合格者が280人突破!
ドイツSAP社のSAP認定コンサルタント試験に合格した京都情報大学院大学(KCGI)の学生が累計280人を超えました。2005年に1人目が出た合格者は,その後順調に増え続け,2017年には100人,2019年に150人,2020年には200人と実績を重ね,2023年度末時点で280人以上が合格しています。2020年11月には,200人突破を記念して,KCGI京都本校百万遍キャンパスで,ERP専門分野に所属する学生と,ERP教育担当の教員が出席してセレモニーが行われました。
セレモニーでは,指導した藤原正樹教授から合格した学生たちに記念品が贈られました。古澤昌宏教授からは祝意とともに,「学生諸君の努力と教授陣の奮闘の賜物と拝察します。SAP社公式サイトによると,認定者は『スキルを最新の状態に保ち最高水準の専門知識を確保』し続ける必要があります。経験を積み社会変革に貢献してください」と激励のメッセージが届きました。
最後に,藤原教授が「SAPの認定試験はグローバルスタンダードの資格です。皆さんは資格を取り,ERPコンサルタントとして世界で活躍する土台を作られました。これを機に修了後,大きく羽ばたいていってください」と激励しました。