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学長挨拶

京都情報大学院大学学長 応用情報技術研究科長

富田 眞治Shinji Tomita

京都情報大学院大学学長 応用情報技術研究科長 富田 眞治
  • 京都大学工学士,同大学院博士課程修了(電気工学専攻),工学博士
  • 京都大学名誉教授,元京都大学大学院情報学研究科長,元京都大学総合情報メディアセンター長,元京都大学物質-細胞統合システム拠点特定拠点教授/事務部門長,元九州大学教授,元ハルピン工業大学顧問教授
  • 博士課程教育リーディングプログラム委員会複合領域型(情報)委員,IFIP(国際情報処理連盟)TC10委員,情報処理学会理事,情報処理学会関西支部支部長,京都高度技術研究所客員研究部長,京都府ITアドバイザリーボード委員,総合科学技術会議専門調査会,「エクサスケールスーパーコンピューター開発プロジェクト」評価検討委員会委員,京都府情報政策有識者会議委員長など歴任,電子情報通信学会フェロー,情報処理学会フェロー
  • 担当科目「コンピュータ構成論」「オナーズマスター論文」

新しい時代を切り拓くチャレンジ精神を!

1945年に今日のコンピュータの原型となるプログラム内蔵方式がペンシルバニア大学ムーアスクールで提案されてから80年近くが経過します。私自身もコンピュータとともに歩んできたことになりますが,コンピュータの発展は目を見張るものがあります。1950年代にはコンピュータの商用化が開始され,数値計算用としてFORTRAN,事務用としてCOBOL,人工知能用としてLISPなどのプログラミング言語が開発されて,様々な分野の応用に供されました。1964年のIBM 360で汎用大型コンピュータは一応の完成を見ました。その後ダウンサイジング(小型化)が飛躍的に進み,1970年前後には,オペレーティングシステムUNIX,構造化プログラミング,Internetの原型となったARPANET,1kbit DRAM,4ビットマイクロプロセッサIntel 4004,共有メモリ型の並列コンピュータC.mmpなど,綺羅星のごとく新しい技術が実用化されてきました。私の20歳代後半はちょうどこの時期に当たり,研究は何をやっても非常に楽しく,わくわくとした時代でした。私自身も斬新な構造をしたかなり大規模なコンピュータを設計し,実際に製作しました。

1970年代以降も,プロセッサやメモリ技術,ハードディスク技術,通信技術,センサー技術がまさに一体化し,統合化されて発展してきました。どれ一つ欠けても今日のコンピュータの普及はなかったと思います。今日の最高速のコンピュータの演算性能は毎秒1018(エクサ)回を超えています(ちなみに1949年にケンブリッジ大学で開発された最初のコンピュータEDSACでは毎秒667演算能力)。

コンピュータの演算能力の向上ばかりではなく,1989年にWWW(World Wide Web)やデータマイニングなど新しい大量データ(Big Data)に対する処理方式が実用化されてきました。また2000年代以降1960年代から研究されていたニューラルネットが一層進化し,深層学習アルゴリズムとして自然言語・音声・画像理解などのパターン認識のみならずビジネス分野でも企業ビジネス戦略の立案・意思決定に広く実用化されてきました。

若い学生のみなさんには総合科学技術としてのコンピュータを人工知能やデータサイエンスなどの新しい応用分野に十二分に使い切り,また新しい応用分野を開拓し,真に人類の幸福に役立てていただきたいと思います。今の時代は私が経験した1970年代と同様にわくわくしたチャレンジングな時代であり,みなさんにも私と同様に研究や学習に楽しさを味わってほしいと思います。

このような情報化の流れの中で,私たちは,日本最初のICT系の専門職大学院である京都情報大学院大学を設立いたしました。2004年4月に最初の学生たちを迎え,今年で20年目になります。2004年創立年の学生入学定員は80名でしたが,今日入学定員は700名となっています。また,札幌と東京にサテライト校を設けています。本学は,コンピュータ揺籃期の1963年に設立された京都コンピュータ学院を母体とし,その伝統と実績を継承しています。私自身は1960年代後半頃までコンピュータが存在することを知りませんでした(もちろん京大内には共同利用の計算機センターがありましたので,研究者のみなさんは利用していただろうと思いますが)。1963年というコンピュータの創成期にFORTRAN研究会がすでに発足していたというのは驚異であり,極めて先見性の高いものだったと思います。

本学の建学理念には「社会のニーズに応え,時代を担い,次代をリードする高度な実践能力と創造性を持った応用情報技術専門家を育成する」と書かれています。これを達成するため,応用情報技術研究科ウェブビジネス技術専攻を置き,応用情報の広い範囲から専門分野として,人工知能,データサイエンス,ウェブシステム開発,ネットワーク管理,グローバル・アントレプレナーシップ,ERP(企業基幹システム),ITマンガ・アニメ,観光ITを設けました。入学生はその一つを選びます。専門分野の外に共通選択科目群と産業科目群(農業,教育,コンテンツマーケティング,金融,海洋,医療・健康など) があって,これらからも自由に科目を選択できます。

学生のみなさんには,教員と密なコミュニケーションを取りながら,勉学を進めていってほしいと考えます。質問をすれば学生諸君もより理解が深まるでしょうし,教員にとっても授業内容の見直しに繋がります。また,基礎科目の重要性も認識してください。本学では様々な応用情報技術を学びます。そのような応用技術を学ぶ上でしっかりとした基礎知識が必要です。特に線形代数,微積分,統計学の知識は必須です。学生諸君の中には文科系出身の方も多いと思います。これらの学生諸君はぜひ基礎科目をしっかり学習していただきたいと思います。

本学の必修科目にマスタープロジェクト(MP)があります。MPは自ら研究課題を見つけて,研究動向を調査し,新しい知見を得るという,極めて能動的なものです。世界の研究者と競いあえるレベルにぜひなっていただきたいと思います。研究は非常に楽しいものであることがわかります。

本学には,研究大学院において高度な研究業績を有する教員に加え,企業でのCIO経験者や実業家など実務経験豊富な教員や外国人教員が多数在籍しており,ICT理論と実務をバランスよく修得できるように配慮しています。

本学はICTの研鑽を積みながら,それが社会に与える影響を十分理解し,正しい方向へ導いていけるような人材を育てたいと願っています。志を有する方であれば,年齢,経歴,国籍,さらに文系理系を問わず,門戸を開いています。大学を卒業されたばかりの方はもちろん,すでに実社会で活躍しつつキャリアアップを目指している社会人,海外にありながら日本での勉学に興味を持つ留学生,私たちはこのような方々の入学を心から歓迎いたします。