メッセージ
わたしの専門はクラシック音楽で,ヴァイオリンの演奏家です。
音楽文化に関する講義を開講しているという点において,ITの専門職大学院 京都情報大学院大学はユニークな存在です。これは他に類をみないものです。人間の精神世界に欠かせない,心の栄養としての音楽,その「音楽の講義」を開講することは,全人教育の重要性を学生に教えることになり,「文理融合」の理想的な大学の取り組みとなると考えています。
これは,わたしの「授業哲学」とも言うべき重要なところです。すなわち,世界の歴史において神学者,哲学者,数学者もまた音楽家なのです。教養人としての現代人はなおさら,縦の知識だけではなく,横の知識も俯瞰できることを要求されます。将来,世界のIT業界で活躍される皆様が,音楽を通して豊かな感性と想像力,発想力を養う一助となれるように努めたいと思います。
わたしの10代は中国において西洋文化批判の真っ只中で,ベートーヴェンやモーツァルトを弾いてはいけない厳しい時代を過ごしました。楽器も買えなかったため,父がどこからかボロのヴァイオリンを手に入れ,ノコギリで小さく切って子供用に改造してくれて,わたしは隠れて練習しました。楽譜も売ってない時代で,父は6年間で30数冊の教材を手写ししてくれました。当時はヴァイオリンを学ぶこと自体珍しいことで,近くに先生がおらず,列車で3時間かけてレッスンに数年通い続けました。父と二人三脚で艱難辛苦に耐え,音楽の道なき道をひたすら歩み続けてきました。
日本の桐朋学園大学と東京芸術大学での研鑽を計13年間続け,どのようなアイデンティティを持ったヴァイオリニストとして音楽の舞台に立てるかを,常に自分に問いかけてきました。音楽を通しての様々な経験を皆様にお伝えできればと思います。