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土持 ゲーリー 法一 教授

土持ゲーリー法一教授

土持 ゲーリー 法一 教授

大学教授法(ファカルティ・ディベロップメント/FD),
比較教育学,戦後教育改革史,
リベラルアーツ教育の専門家

(米国)カリフォルニア州立大学卒(Bachelor of Arts),カリフォルニア州立大学大学院教育学修士課程修了(Master of Arts),コロンビア大学教育大学院修士課程修了(Ed.M.),コロンビア大学教育大学院博士課程修了(Ed.D.),東京大学教育学博士,(カナダ)ビクトリア大学教育学部客員教授,(米国)南フロリダ大学マーク・T・オア日本研究センター客員研究員,名古屋大学高等教育研究センター客員教授,文部科学省大学設置審教育組織審査教授,文部科学省大学院設置審教員組織審査教授,元東洋英和女学院大学人文学部教授/同大学大学院人間科学研究科教授,元国立大学法人弘前大学21世紀教育センター教授/同大学高等教育研究開発室長,元帝京大学教授/同大学高等教育開発センター長/同大学学修・研究支援センター長,元大学経営コンサルタント(21世紀カレッジ・マネージメント・コンサルティング主宰)

京都情報大学院大学(KCGI)の学生と授業を創ることが教育哲学(Teaching Philosophy)という土持ゲーリー法一教授。ティーチング・ポートフォリオ,ラーニング・ポートフォリオなどを研究テーマに,学習者中心の授業を創造するラーニング・コミュニティを形成しようとKCGIの学生に呼び掛けます。

学生の学びを「触媒(Catalyze)」するのが教育本来の目的

‐学生はどのように学んでいったらいいのか,先生の教育哲学に基づいてお聞かせください。

‐なぜ,先入観にとらわれてはいけないのでしょうか?

先入観にとらわれると柔軟で自由な発想ができなくなるからです。本学はIT,なかでもAI(人工知能)など最先端の技術を学ぶ場ですので,創造性が問われます。

‐学習と学問の違いは?

これまでの学校の学びは受け身で,教わったことを習う「学習」に重点が置かれました。すなわち,学びでも「インプット」が強調されました。大学院での学びは,誰も教えてくれない,自ら問うて学ぶ場所になります。すなわち,「学問」という言葉の由来になります。問うて学ぶとは,社会人としての基本です。学びでの「アウトプット」が強調されることになります。

‐課題発見型学習とは?

これからの社会では課題発見型学習が求められます。新しいものを創造するためには発見が必要です。発見するためには「問い」が不可欠です。ひとりで「問う」ことには限界があります。すなわち,チーム学習が必要になります。これをTBL(Team-Based Learning)と呼びます。

‐学習環境とは?

学びは学習環境で変わります。教員の仕事は,教えるだけではありません。教員はファシリテータでなければなりません。これは,教えることを,教員中心の「教育」と考えるか,学習者中心で個性を引き出す「education」と考えるかの違いによります。前者が日本的,後者がアメリカ的考えです。

‐リベラルアーツとは?

これは大学教育のエッセンスです。これまでリベラルアーツといえば,文系を連想しました。しかし,理系にこそ,リベラルアーツが必要であることが強調されるようになりました。たとえば,東京工業大学に新たにリベラルアーツセンターが設立されました。アメリカ東部の有名なMIT(マサチューセッツ工科大学)でも 同様にリベラルアーツの必要性が言われています。また,クリントン元国務長官の卒業校で,映画『モナリザスマイル』の舞台としても有名になったウェズリー・カレッジは,アメリカを代表する理系の女子大学で,リベラルアーツ・カレッジとしても有名です。私はこの大学の「フレッシュマンセミナー」(1年次ゼミに相当)を日本で導入しました 。これからの大学院では文理融合の考えが重要になります。

‐社会人基礎力とは?

「社会人基礎力」という言葉は,多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力として,大学や企業で頻繁に使用され,書籍も出版されています。そうした書籍の中でリベラルアーツの批判的思考力が社会人基礎力を促すとして,私の授業実践全容が収録されています。

‐AIとは共存できるでしょうか?

2045年にAIが人間を凌駕する時代が来るとの報道を受けて,AIが人の職業を奪うのではないかとの危機感が漂っています。AI技術でも最先端のある大手電機メーカーの企業内教育研修に参加したところ,AIと「対峙」するのではなく,共存する必要性を強調していました。すなわち,科学技術と人間教育の一体化です。

‐学び方を学ぶとは?

MITでもウェズリー・カレッジでも重視しているのが,「学び方を学ぶ」という自律型学習者になることを学ばせることです。これがリベラルアーツ・カレッジのエッセンスとなるものです。

‐大社連携とは?

これは私の「造語」ですが,これからの大学や大学院は社会(企業)と連携する必要があります。そのためには自律型学習者の育成が求められます。

‐KCGグループの教育理念について

本学の母体である京都コンピュータ学院(KCG)の教育理念として,「コンピュータ技術における創造的能力の養成」「情報化社会における複眼視的思考力の養成」などが掲げられています。まさしく,理系におけるリベラルアーツの重要性を早くから認識し,実践してきたということが言えます。これからは一歩進めて, 文理融合のKCGグループを目指すべきであると考えます。

‐学生へのメッセージをお願いします。

本学の学生は,誰よりも恵まれた学習環境にいます。なぜなら,ITの専門知識を身につけることが容易にでき,それを縦横無尽に駆使して,未知の世界に果敢にチャレンジできるからです。私の夢は,本学の学生とのコミュニケーションを大切にし,学習者中心の授業を一緒に「創り」あげる,ラーニング・コミュニティを形成することです。ぜひ私の夢の実現に力を貸してください。