教育学に基づく確かな学びを支援
本学には教育学の専門家が多数在籍しており,これらの教員を中心として高等教育・学習革新センターを設置しています。当センターの役割は本学の教育と学習の革新をリードすることであり,その専門的見地から教員への授業改善や,学生の主体的な学びを支援するなどの教育コンサルティングを行っています。
高等教育・学習革新センターの活動
高等教育・学習革新センターの活動は,「教育開発・改革」,「高等教育研究」,「学習促進」という3つの柱から主に構成されます。「教育開発・改革」においては,バックワードデザインを踏まえた授業設計,ICEルーブリックを取り入れた評価方法の開発,授業でのアクティブラーニングの促進,ティーチング・ポートフォリオおよびラーニング・ポートフォリオの研修の企画・運営等を行っています。「高等教育研究」では,国内外の高等教育・学習の動向に関する調査と研究を行っています。「学習促進」においては,学生による授業コンサルティングという,学生の視点からの授業の改善や質の向上の取り組みに関して研究を進めています。これらの活動の上で,「次世代型教員FD研修」などの先進的な「教員向け研修」を多数実施しています。
よりよい授業を提供するために
本学では開学以来,「教員相互による授業評価」を実施しています。「教員相互による授業評価」を,教員の授業改善へ確実に繋げて本学教員の教育力をさらに高めるため,「教員相互メンタリング」という新たな手法を構想するに至りました。高等教育・学習革新センターの教育学の専門家が,教員に対する学生からのコメントを回収して状況を把握し,当該授業の担当教員へのコンサルティングを通じて,授業方法の改善等のアドバイスを行います。これにより,より学生たちの立場に立った授業を教員は提供できるようになります。
学生のニーズを反映した授業開発に向けて
これまでの大学教育では試験問題に学生がどの程度正答できたかの把握にとどまり,学生が真に学習し知識を修得したかを判断できていないことがほとんどでした。学生にとって最も大切な真の学習とは「授業の後に,長期にわたって,知識・知恵として定着する学習」です。現在の大学教育においては学生に対する学習の質についてのフィードバックがほとんどないことが大きな問題となっています。フィードバックとは「授業における学習パフォーマンス」をどのように改善すべきかを学生に伝えることであり,学生自身が間違いを改善し,学習を効率化することが期待されます。本学が開学以来行ってきた「学生による授業評価」を「学生の学習へのフィードバック」に結びつけ,学生のニーズを反映したより高度な授業を開発するため,高等教育・学習革新センターでは「学生への授業のフィードバックの調査と対応」に取り組んでいます。
教員と受講学生をつなぐ認定TA
高等教育・学習革新センターでは,より良い授業を創り出すための取り組みとして,「認定TA(Certified Teaching Assistant)」制度を2023年度より導入しています。この制度は世界的にも例がなく,本センターが研修を通してセミプロに近いともいえる資格を与え,認定TAが,単に教員の補佐をするだけでなく,教員と学生双方の視点から授業をサポートし,学生のアシスタントもするという試みです。
TA(Teaching Assistant)の役割は,教員の授業関連業務と学生の学びの支援にあります。本学独自の認定TAは,従来のTAの枠にはとどまらない「反転授業」の支援等を担うTAです。そのため,認定TAとなるには特別な研修の修了が必要です。認定TAは,反転授業の実践支援だけでなく,授業を受講する学生のサポートも行います。具体的には,事前課題ビデオを正しく視聴しているか,授業内でのグループワークに積極的に参加しているか,教員からの課題の内容や趣旨を正しく理解しているかなど,教員と受講学生,受講学生同士のコミュニケーションを円滑にする役割も含まれています。また,認定TAは,教員が反転授業のための事前学習用の「動画」を作成するための準備,例えば,その動画が受講学生に分かりやすいかどうかという,「学生目線」に立った教員へのコメントやフィードバックも行います。
このような経験を経ることにより,認定TAを務める学生の,教員と学生との間の懸け橋となるようなコミュニケーション能力を育成していきます。また,認定TAが学生と教員の間に入ることにより,授業内容や学習方法について教員に質問したくてもなかなかできない学生も,教員との円滑なコミュニケーションの機会を得ることを目指します。認定TAはグループワークのファシリテート力の修得も期待されます。これは,認定TAを務めた学生が社会に出た後,建設的なアイデアや意見が生まれるようにディスカッションや会議を進行させたり,自らコメントや意見を出して議論を深めたりできる人材となることを想定しています。
認定TAを経験した学生は,就職活動において「教員と学生との間の懸け橋となるようなコミュニケーション能力」や「グループワークのファシリテート力」をアピールすることにより,自身の人材としての有用性を示せます。
本学は,多くの学生が積極的に研修を受けて認定TAに挑戦しその力を発揮することに期待するとともに,学生の皆さんが,授業において認定TAによるきめ細やかなサポートを受けながら自身で主体的に学習内容を深く理解し,それを活用する力を育てていきたいと思っています。
学習者中心の授業を一緒に創りあげるラーニング・コミュニティの形成を

高等教育・学習革新センターを本学では「Center for Teaching and Learning Excellence」と表現・表記し,教職員が学生と共により良い授業を創り出すために「FD(Faculty Development)」を実施し,世界的にも例がない「認定TA(Certified Teaching Assistant)」制度を導入しています。
また,「ハイフレックス(Hybrid-Flexible)仕様教室」を有する京都本校百万遍キャンパス本部棟は,これからの時代のIT教育の拠点となります。ChatGPT などのAI(人工知能)技術が出現する現在の大きな時代の変化の中,学生とのコミュニケーションを大切にし,学習者中心の授業を教職員が学生と一緒に創るラーニング・コミュニティを形成したいと考えています。
高等教育機関が一般的に使う「FD(Faculty Development)」は,教育内容・方法等を教職員が組織的に研究・研修することを意味しますが,本学ではさらに学生を加えて優秀な授業を創り出していこうという目的を込めています。
コロナ禍を経て大学をはじめとする高等教育機関の構造が大きく変わるなかで,本学はオンライン形式やハイフレックス形式の授業の土台を以前から確立していたため,構造変化にしっかりと対応できました。京都本校百万遍キャンパス本部棟には様々な授業形態に柔軟に対応できるよう設計された「ハイフレックス(Hybrid-Flexible)仕様教室」を設けていて,これからの時代に合ったIT教育を進めていくうえでの拠点となっています。
AI(人工知能),とりわけChatGPTなどの生成AIの出現は,時代の大きな変化を感じさせます。そのような中,IT専門職大学院である本学は,これらとどう向き合っていくかを考えていく必要があります。生成AIが導き出す答えを「鵜呑み」にするのではなく,批判的に考える学生になってほしいと考えています。
本学は,学生とのコミュニケーションを大切にし,学習者中心の授業を一緒に創りあげる,ラーニング・コミュニティを形成していきたいと思います。

