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2007年1月 Windows Vista

マイクロソフト(Microsoft)社が久しぶりに新OS・Windows Vistaをリリースした。エンタープライズ向けには,すでに昨年末に発売されたが,パーソナル用は1月30日に世界同時リリースされた。1995年のWindows 95の発売時には,インターネットの普及期とも重なり一大ブームを引き起こしたが,今回はどうだろうか。同時にアプリケーションの定番であるオフィスの新バージョンOffice 2007も発売された。

Windows Vistaは,いくつかの機能を宣伝している。エクスプローラによる検索/整理,エアロ(Aero)と呼ぶユーザインターフェイス,ライブ タスクバー サムネイルやWindowsフリップとWindows フリップ 3Dによるウィンドウ管理などだが,それほどの新規性は感じられない。個人情報保護に対応してセキュリティ機能も高めたというが,そもそもの脆弱性はどうなのだろう。アップデートの頻度は削減されるのだろうか。

個人的には,ロングホーン(Longhorn)というコードネームで開発が進められていた頃から期待していたプロジェクトがあった。MyLifeBitsというものである。個人の生涯にわたるすべての情報を蓄積するという,1945年にバネーバ・ブッシュ(Vannevar Bush)が構想したMemexのビジョンを実現するというものである。

このプロジェクトには,あのゴードン・ベル(Gordon Bell)も参画している。ベルといえば,DECで,計算機アーキテクチャの教科書ともいうべき名機を次々と開発してきた。私自身も,PDP-11,2060,VAX,アルファとDECのマシンを使い続けてきた。DECの辿る運命と軌を一にするかのように,ベルもいまやマイクロソフトの研究員として,ソフトウェアの開発を行っている。

最終的なリリースの判断は,今もビル・ゲイツ(Bill Gates)会長が行うという。MyLifeBitsは時期尚早,あるいは何らかのビジネス的な判断が行われたのかもしれない。一部の機能のみをエクスプローラに取り込んだようである。もともと「重々しい」ウィンドウズだが,Vistaでは,さらにハイスペックなハードウェアが要求されている。ビジネスセンスに優れるゲイツ会長の引退前の判断の適否がまもなく証明されようとしている。

内藤 昭三