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2009年4月 モンティ・ホール問題をディシジョンツリーで解く

モンティ・ホール問題と呼ばれている有名な問題があります。この問題の別名は「モンティホールジレンマ」です。これは,アメリカのクイズ番組の司会者のMonty Hallさんが担当しているコーナーから派生した問題です。

なぜ有名になったかというと,

1990年に "Parade magazine" の中の Marilyn vos Savant の「Ask Marilyn」という質問と回答のコラムでこの問題の解が議論された後,数百人の数学教授を含む約一万の読者が,(実際には正答であったにも関わらず)「彼女の解答は間違っている」と投書された。(出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/モンティ・ホール問題

ここでは,よくある数学,確率論やベイズの定理など方法ではなく,私がKCGIで教えている経営学特論の意思決定メカニズムの章で紹介した,ディシジョンツリーを使って説明したいと思います。

まず,モンティ・ホール問題をおさらいします。

プレイヤーは,3つのドアを見せられる。ドアの1つの後ろにはプレイヤーが獲得できる景品があり,一方,他の2つのドアにはヤギ(景品がなく,ハズレであることを意味している)が入っている。ショーのホストは,それぞれのドアの後ろに何があるか知っているのに対し,プレイヤーはドアの後ろの様子はもちろん知らない。

プレイヤーが第1の選択をした後,ホストのモンティは他の2つのドアのうち1つを開け,ヤギを見せる。そしてホストはプレイヤーに,初めの選択のままでよいか,もう1つの閉じているドアに変更するか,どちらかの選択権を提供する。プレイヤーは,選択を変更すべきだろうか?(出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/モンティ・ホール問題

ここは「確率」ではなく,「期待値」としてこの問題をみます。

景品の車の価値を¥1,200,000と仮定しましょう。

以上の仮定から,以下のようなディシジョンツリーを描くことが出来ます。

モンティ・ホール問題のディシジョンツリー

ディシジョンツリーでは,
□は決定ノードと言って,行動の分岐を表しています。
○は確率ノードと言って,コントロールできない事象を表しています。
描くときは,左から右を描いて,各ノードや枝の状態を書き込み,そして右から左に最適な意思決定を探ります。

今回では,意思決定ノードは:

1.どの扉を選ぶか
2.その後,扉を変えるかどうか
の二種類がありますが,ここでは,どの扉を選んでも「同じよう」に扱って,選んだ扉の「アタリ率」を確率ノードで表現するようにしました。

そして,一種類の決定ノード(扉変えるかどうか?)と,一種類の確率ノード(最初の選択はアタリかどうか?)を用いて,ディシジョンツリーを描きます。

左端に決定ノードを描き,このノードから二つの枝,「扉変える」,「扉変えない」を描きます。このいずれの枝は,「現選択はアタリかどうか?」の確率ノードに繋ぎます。そして,二つの確率ノードから,さらに「アタリだった」と「ハズレだった」の二つの枝に分岐します。

ゲームの設定から,「最初でいきなりアタリ」の確率は三分の一で,「最初からハズレ」の確率は三分の二です。

利得については,このように考えます。

「アタリだった」のに→「扉変える」→ハズレに成るので→¥0
「アタリだった」→「扉変えない」→アタリのままなので→¥1,200,000
「ハズレだった」→「扉変える」→アタリに成るので→¥1,200,000
「ハズレだった」のに→「扉変えない」→ハズレのままなので→¥0

ここまでツリーを描いたら,右端から左へ検討していきます。

「扉変える」場合の確率ノード(上のほう)の期待利得を見てみると,
(¥0*1/3)+(¥1,200,000*2/3)=¥800,000

「扉変ない」場合の確率ノード(下のほう)の期待利得を見てみると,
(¥0*2/3)+(¥1,200,000*1/3)=¥400,000
で,最も左端の決定ノードを見ます。

この決定ノードの右上の枝の期待利得は¥800,000となり,右下の枝の期待利得は¥400,000になります。
「¥800,000>¥400,000」なので,右上の枝,つまり「扉変える」ほうが,期待利得が高い…ということになります。

従いまして,モンティ・ホール問題において,「扉を変えたほうがいい」というのが正しい意思決定になります。

このように,直観では理解しにくい,あるいは誤った判断を下しやすい状態に直面した時,ディシジョンツリーのような意思決定支援ツールを使うことで,より正しい選択を行えるようになります。
このようなことは,何故我々は経営学を学ぶのか…の一つの理由になります。

李 皓