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2007年10月 鉄道に関する情報学

1872年10月14日に東京(新橋)と横浜(桜木町駅)とを結んだ日本最初の鉄道が開業したことにちなんで,10月14日が鉄道の日となったので,今月は鉄道に関する話題である。

当時,東京と横浜は徒歩で1日ぐらいかかったのが,1時間程度で結ばれるようになり,情報伝達速度も1時間程度にまで縮んだ。電話のサービスが1890年に開始され,電話が普及するまでは,全国に広がった鉄道網が通信分野にも大きな役割を果たしていた。

一方,電車は1895年に京都市で開通した京都電気鉄道(後の京都市電)が最初で,大正から昭和初期にかけて,大都市圏を中心に私鉄電車網が発展した。日本の大都市圏において,郊外に居住して電車で通勤するというライフスタイルが形成され,鉄道と日本人との関わりは大きくなったのである。

鉄道と情報処理の関わりが大きくなったきっかけは,国鉄の乗車券の発行(現在のJRのみどりの窓口)である。特急などの指定席を予約する仕組みを全国に導入したことは,情報処理技術のかがやかしい成果であろう。

乗車券が発行できるようになると,ただ券を売るだけではなく,駅に入場するとき(改札)と駅を出るとき(集札)の処理もできないだろうかという考えが出てきた。1967年に京阪神急行電鉄(現在の阪急電鉄)の北千里駅で自動改札機が本格的に導入されて以後,導入数は確実にのびて,1990年代には首都圏で大々的に設置され,自動改札機は当たり前の装置になった。実は,首都圏の自動改札機については,現在のSUICAの原型のようなものがはじめから考えられていたらしい。詳細は省くが,JR各社や関西・首都圏の私鉄各社は,最終的には電子マネーのサービスを提供するようになるのである。情報技術の最新のものが鉄道に導入されているといえるだろう。今年10月に首都圏で何度か自動改札機がサーバと通信できずに自動改札機が使えなくなる事件が発生したが,いまや自動改札機は単なる改札・集札機械ではなく,インフラもどきになってしまったことが浮き彫りになった。

今度は乗り換え案内に目を向けてみよう。電車の時刻表と連動した乗り換え案内システムはすばらしいものがある。1990年初頭には路線図のつながりだけの乗り換え案内だったのが,いまや時刻表や地下鉄の降り口までも携帯電話で案内してくれる時代になった。これも情報通信技術の発展のおかげである。1分,2分の遅れで乗り換えがうまくいかず,最終到達地点で20分遅れになることまでもが乗客にわかってしまう。そのために,1分,2分の遅れが鉄道会社に対する乗客からのクレームの原因になっているということも忘れてはならない。

車両の方へ目を移そう。最近の電車は液晶ディスプレイを車内に搭載して,停車駅の案内のみならず,事故の情報も素早く案内できる仕組みを備えている。もちろん,簡単なニュース速報サービスもある。

最後に,鉄道制御の話をしたい。鉄道制御は,車両のモータ制御と高度な信号システムによって成り立っており,新幹線などは半分以上自動化されている。地下鉄でも自動運転が可能な都市もある。このようにコンピュータの力によって鉄道を制御することも可能になってきている。

現在の鉄道は情報通信技術の宝庫である。

江見 圭司

JR東日本の車内(中央線)
JR東日本の車内。事故の情報