京都情報大学院大学(KCGI)は2024年に創立21周年を迎え,11月20日,KCGI京都駅前サテライト・京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校6階大ホールで創立記念式が挙行されました。式では,最初に寺下陽一KCGI副学長があいさつ。学生,教職員が共にKCGグループの建学の精神であるパイオニア・スピリットを思い起こし,さらなる発展を誓いました。その後,国際会議第4回APOLO(Advancement of POLarimetric Observations)の議長Oleg Duvovik博士(フランス リール大学教授)とアメリカNASA/AERONET名誉マネージャーBrent Holben博士による記念講演会「衛星リモートセンシングとNASA/AERONETによる大気環境モニタリング」を開催しました。両博士に,新進気鋭の地球物理研究者である日置壮一郎博士(リール大学研究員)が通訳を兼ねて加わり,人類共通の環境問題である「気候変動問題」への取り組み,これからの対策を,衛星リモートセンシング・地上からの観測・膨大なデータ解析,計算機処理などに基づいて幅広い観点から解説しました。
3博士はいずれも地球環境研究の世界的権威です。会場にはKCGI・KCGの学生のほか一般の方々も聴講に訪れました。
講演会ではまずHolben博士が,AERONETという観測ネットワークがどのように生まれどのように生き残ってきたかを説明。わずか数人でコンセプトから考え始めたプロジェクトが大きく世界へ羽ばたいていった例であるとして,30年以上にわたる研究から得た教訓を,学生たちの今後の道しるべとなるように紹介しました。次に,Duvovik博士が,GRASP(Generalized Retrieval of Atmosphere and Surface Properties)アルゴリズムを中心に,観測したデータをシミュレーションモデルと比較して,大気の粒子の特性を効率よく解析するシステムの開発について,具体的な例を挙げながら話しました。講演後には学生らから「AERONETの未来はどうなると思うか」「科学的な挑戦をするに当たって気をつけていること,大切にしていることは何か」など多くの質問が投げ掛けられ,両博士は丁寧に答えてくれました。最後に,第4回APOLO(APOLO2024)のLOC(開催組織委員会)委員長でもある向井苑生KCGI教授が,普段とは違う講義を聴いて,それを楽しむということが大切,聴く前とは少し違った自分,進歩した自分を感じるとそれがモチベーションになる,と学生たちにエールを送りました。
APOLO2024は,偏光リモートセンシング最前線というテーマで難解な偏光解析に焦点を当てた画期的な国際会議です。2017年に中国で第1回APOLOが開催され,それ以降2年に1回のペースでフランス,アメリカと続き,4回目の会議の場として京都が選ばれ,11月18日~21日の4日間,KCGIを会場に開催されました。
KCGIは2004年4月,日本最初のIT専門職大学院として開学(2003年に開学宣言)しました。産業界のニーズに応え情報処理技術者を育成してきた日本最初のコンピュータ教育機関である「京都コンピュータ学院」の伝統と実績を継承。ロチェスター工科大学をはじめ海外の諸大学とのグローバルな教育ネットワークに基づき,世界最新のIT教育カリキュラムを導入し,さらに経営・マネジメント教育を加味して, IT分野の高度専門職業人,応用分野のトップリーダーを育成しています。修了すると日本の応用情報分野の最高学位「情報技術修士(専門職)」が取得できます。入学定員は880名(開学時の11倍),2022年夏には京都本校百万遍キャンパスに新校舎(本部棟)が完成しました。
講演者の紹介
- Oleg Duvovik博士
- フランス リール大学教授,GRASP CEO,APOLO議長。
- 人工衛星・飛行機・地上データからの大気粒子特性導出理論ならびに解析システムの開発第一人者。
- Brent Holben博士
- NASA/GSFC/AERONET名誉マネージャー。
- NASAが世界に誇る地球規模の地上大気観測網AERONETの創始者で38年にわたりグループを率い昨年引退。「AERONETのレジェンド」として名を馳せている。
- 日置 壮一郎博士
- フランス リール大学研究員。
- 航空機や人工衛星からの偏光を活用した雲の観測及び大気放射伝達計算において優れた成果を挙げ,APOLO 2024において第1回Michael I. Mishchenko Young Scientist 賞受賞。
- 偏光リモートセンシング:
- 大気環境のモニタリングのため,人工衛星のプラットフォームに搭載されたセンサーによって,太陽光の反射波を観測して大気中の物質の量や特性を調べる技術。